2016年8月17日水曜日

最近のAvisynth+を使う場合の色々について

前回の記事についてたコメントあたりから察するに、どうもAvisynth+の基本的な使い方を書いておいた方がいいように感じたので書いておくことにします。
なお、この記事の内容はあくまでも現時点(r2161)でのものですから、今後どのように変わるか(あるいは変わらないか)はわかりません。

SetLogParams
SetLogParamsはr2064で追加されたログ機能です。
avisynth+を実行中に発生した色々な情報を出力します。
SetLogParams(string file, int log_level)
fileはログの出力先の指定で、"stderr"だと標準エラー出力、"stdout"だと標準出力、 "D:\foo\bar\avslog.txt"のようにファイル名にすればファイルに出力されます。
log_levelは出力するログの範囲の指定で、LOG_DEBUGなら詳細なすべてのログ、LOG_INFOならば普通のログ、LOG_WARNINGならば警告及びエラーのみ、LOG_ERRORならばエラーのみを出力します。

この機能によりAvisynth+本体及びプラグインによって発生した疑わしい挙動や不具合が大変わかりやすくなり、バグレポートしやすくなりました。
今後コマンドラインのツールを使う場合はSetLogParams("stderr", LOG_INFO)、AviUtlやVirtualDubのようなGUIツールと併用する時はSetLogParams("出力ファイル名", LOG_INFO)をスクリプトの先頭になるべくつけるようにすることをお薦めします。

SetMemoryMax
こちらはavisynth2.5の頃からのお馴染みですが、どれくらいに設定しているでしょうか?
SetMemoryMax(int mem)
avisynth+は規定値として32bitの場合(より正確には物理メモリより仮想メモリのほうが少ない場合、つまり64bitOS上で32bit版を使う場合)は128MB、64bitの場合(というか物理メモリより仮想メモリのほうが多い場合)は1GBをavisynth本体が使うメモリ量の上限として物理メモリを確保しようとします。
よってこれ以上を使うことが予想される場合、もしくはもっと少なくてもよい場合を除けば、これはスクリプトに書く必要はありません。

また重要なのは、このメモリ上限はあくまでもavisynth+本体が使用するメモリ量であり、プラグインフィルタが使うメモリ量ではないということです。
もしあるプラグインが中間バッファの確保にmallocやstd::vectorを使っても、その分はカウントされません。
Avisynth+には新たにバッファプール機能が追加されたため、この機能を使えばプラグインのメモリ使用量もavisynth+本体で管理することが可能になりましたが、実際に使っているプラグイン作者は現時点では私くらいしかいません(特に問題は見当たらないのですが、一応実験的な機能ってことになってますし)。
よって下手に大きな上限値を設定すると、プラグインのほうでメモリ不足を起こす可能性が出てきます。

で、あるスクリプトの実行時にどれくらいメモリを必要とするかは、使用するフィルタ及びソースの解像度等に依存するわけですが、もし設定された上限値では足りない、若しくはもう少しあったほうがより円滑に処理出来る場合は、先ほどのSetLogParamsによるログで教えてくれるようになりました。

というわけで、決め打ちに走るのもまあ悪くはないかもしれませんが、適切な量を調べてみるのもいいのではないかと思います。
とくにAviUtlと併用する場合はアプリケーション側も32bitなのにメモリ食いまくりますんで、絞れるところは絞るべきでしょう。

SetFilterMTMode
Avisynth+の目玉機能の一つはフレームレベルでのマルチスレッドですが、皆さん使っていますでしょうか?
私は(ここ数年はエンコはせずにコード書くだけの人なので)あまり使ってません。

とりあえずこのフィルタはMT_NICE_FILTERだ、これはMT_MALTI_INSTANCEじゃないとダメだ、とあれこれやるわけですが、ここで重要なのは"DEFAULT_MT_MODE"をどれに設定するかです。

現時点ではDEFAULT_MT_MODEは3(MT_SERIALIZED)以外ありえません。

"DEFAULT_MT_MODE"は、MT modeが設定されていないすべてのフィルタに影響するため、下手に2(MT_MALTI_INSTANCE)などにしようものなら安全な実行はまったく保証されなくなります。

そもそもいままで書かれてきたavisynthプラグインのほとんどはシングルスレッドでの実行を前提としているものが多く、また処理内容的にもマルチスレッド化はスライスレベルでしか実現不可能なものもあります。
このページには"mode 3 is evil."なんて書かれていますが、時間軸IIRフィルタを邪悪呼ばわりするとか、正直頭がおかしいんじゃないかと思います。単にちょっと前までのavisynth+MTにとって都合が悪かったものをそうやってくさしてるだけです。

本当に邪悪なのはmode 2です。
mode 2で動かせるフィルタは、すべてmode 1で動かせるように改変可能なフィルタです。
でも実際にこれまで書かれてきたフィルタを全部改造していくのはちょっと無理なんで、フィルタクラスを複数インスタンス化しそれらを同時に動かすという力技でごまかしているのがmode 2の実態です。
ちなみにmode 2というのは、avisynthMTのSetMTMode(2)と基本的に同じものです。Avisynth+ではキャッシュ機能も改良されたのでメモリ使用量も減って、かなり安定度も上がりました(が、それでも安全とは言いきれない)。

前回記事のコメントで私がなかなかScriptClipの不具合に気づかなかったのは、SetFilterMTMode("DEFAULT_MT_MODE", MT_SERIALIZED)と書かれたavsをオートローディングフォルダに突っ込んでるのを忘れてたからなんですね。


と、だらだらと書いてみました。
もし参考になった方がいましたら幸いです。

1 件のコメント:

  1. ありがとうございます。
    大変、参考になりました。
    これを機にavsテンプレ―トを弄ってみたいと思います。

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